top of page

Latest Articles

Tag

セキュリティ対策連載 #1 「回答が返ってこない」――現場の疲弊から始まる、形だけのセキュリティチェックシート運用

  • 2月26日
  • 読了時間: 7分

更新日:3月10日



当社のセキュリティレポートでは、脅威動向や攻撃手法、対策の考え方など、いわゆる「外から見えるリスク」を中心に解説してきました。

しかし実際の現場では、それとは別の悩みが日々積み重なっています。対策は求められているのに、運用が追いつかない手順は増える一方で、効果が実感できない「やっていること」と「守れている実感」が結びつかないこうした声は、どの企業・どの担当者にも共通して聞かれるものです。

本連載では、最新の脅威解説ではなく、現場で実際に起きている“運用の偏り”や“形だけになりがちな対策”に焦点を当てます。日々の業務の中で感じる違和感や負担の正体を一つずつ言語化し、「なぜうまく機能しないのか」を実務の視点から整理していきます。



セキュリティチェックシートとは?


セキュリティチェックシートとは、企業が取引先・委託先(サプライヤー)やクラウドサービス提供者の情報セキュリティ体制を評価・確認するための質問票(チェックリスト)のことです。自社のセキュリティポリシーや基準(ISO27001準拠、NIS2指令対応など)を満たしているかを、設問形式で自己申告してもらうツールで、項目数は数十〜数百に及びます。主な目的は、サプライチェーンリスクの把握と、機密情報漏えいなどの事故を未然に防ぐことです。

大企業では購買・調達・ITリスク管理部門が、中小企業では総務や情報システム担当がこれを作成・送付し、回答を回収・分析しています。




「回答が返ってこない」――現場の疲弊から始まる、形だけの運用



「回答が返ってこない」――現場の疲弊から始まる、形だけの運用「チェックシートを送ったが、期限を過ぎても返ってこない」「催促の連絡をすると、先方の担当者から不満を言われてしまう」「ようやく集まった回答を表にまとめているだけで、ひと月が終わる」サプライヤー管理や委託先管理に関わる担当者であれば、一度はこの状況を経験しているのではないでしょうか。本来、リスクを減らすための取り組みであるはずのチェックシートが、いつの間にか「回収すること自体が目的」になっています。多くの企業が時間と費用をかけて実施しているこの活動が、実は十分な効果を生んでいない。現場では、そんな違和感が静かに積み重なっています。





なぜ、あれほど頑張っても“形だけ”になってしまうのか


原因は、担当者の努力不足ではありません。むしろ逆で、現場はすでに限界まで頑張っています。問題は、セキュリティチェックシートという手法そのものが持つ構造的な弱点にあります。■ なぜ返ってこないのか(現場で起きているリアル)セキュリティチェックシート(取引先への対策確認書)は、出す側は「重要な統制」だと思っていますが、受け取る側にはこう見えています。


① 担当部署が存在しない(特に中小企業)

 大企業:情報システム部・セキュリティ担当がいる

 中小企業:総務が兼任、営業が押し付けられる

 「誰が答えるのこれ?」状態 → 結果:回答が先延ばしになってしまう


② 質問が専門的すぎて答えられない

 よくある質問例:

  • ログの保管期間は?

  • 脆弱性管理プロセスは?

  • インシデント対応体制図は?

 現実:「そんな正式な運用してない…どう書けばいいの?」

→ 書けない=回答が先延ばしになってしまう


③ 優先順位が最低ランクになる

 受け取る側の優先順位はこうです。

 売上に直結する仕事 → 納期対応 → 社内トラブル → 見積・請求 ……

 取引先のセキュリティチェックシート ←ここ

→ 緊急でも義務でもないので後回し


④回答するのは 1社だけでない(しかも会社ごとに質問内容やボリュームが異なります


⑤ 出しても何も起きないと思われている

 過去の経験から、

  • 出してもフィードバックなし

  • 評価結果も来ない

  • ただの形式提出

 → 「これ意味あるの?」となる サプライヤー側は多いそうです。



アンケート運用で起きている現実(チェックシート版)

  • 回答依頼・催促・回収に膨大な手間がかかる

  • 回答内容の確認に時間が取られ、本来の分析ができない

  • 各社ごとに形式が違い、比較ができない

  • 毎年同じ内容を繰り返しているだけになる

  • 「やった記録」は残るが、改善につながらない

つまり、管理しているように見えて、実態は把握できていないのです。





リスク管理の本質は「疑うこと」ではない


ここで誤解してはいけないのは、サプライヤーや現場を疑いたいわけではない、という点です。

ほとんどの企業は誠実に対応してくれています。問題は、人ではなく「仕組み」にあります。

現在のアンケートは、どうしても次の前提に依存しています。

相手の自己申告を信じるしかない

しかし、ここに大きな限界があります。



「実施しています」という回答は、本当に今の状態か?


次のようなケースは珍しくありません。

  • 去年の回答をそのまま使い回している

  • 現場と回答内容が一致していない

  • 担当者が変わり、実態を把握していないまま回答している

  • 実装予定の対策が「実施済み」として記載されている


これは悪意ではなく、チェックシートという形式では実態を確認できない という問題です。

つまり、


  • 善意の申告

  • 客観的な事実

この二つを照合する手段が、現状ほとんど存在していません。




外部委託しても、問題は解決しない理由


負担軽減のために、アンケート配布や回収を外部に委託するケースも増えています。

確かに作業量は減ります。しかし、ここにも落とし穴があります。


よくある委託後の状態

  • 回収作業は楽になったが、中身の検証ができない

  • 分析過程が見えず、判断材料として使いづらい

  • 結果は報告書として届くが、改善アクションにつながらない

結果として残るのは、

「実施した」という記録だけ

これでは、企業を守る活動ではなく、単なる説明資料作成に近い状態になってしまいます。



それは本当に、会社を守る仕組みになっているか?

ここで改めて考える必要があります。

アンケートの目的は何でしょうか。

  • 回収率を上げることではない

  • 報告書を作ることでもない

  • 監査対応のための資料作成でもない

本来の目的は、ただ一つです。

現実のリスクを正しく把握し、対処すること

もし現状が、

  • 手間は増えている

  • 実態は見えていない

  • 改善にもつながっていない

のであれば、それは運用の問題ではなく、方法そのものを見直す段階に来ている のかもしれません。




形骸化の背景にあるのは「努力の問題」ではなく「確認の仕組みの難しさ」


多くの現場が疲弊している理由は明確です。

確認できないものを、確認しようとしているからです。

自己申告に頼る方法だけでは、

  • 状況の変化に追いつけない

  • 継続的な把握ができない

  • 客観性を持てない

この構造的な限界こそが、チェックシート運用を「やっているというアリバイ作り」に変えてしまう最大の要因です。




次回予告


では、これから求められる管理とは何なのでしょうか。次回は、各種ガイドラインが実は強く示している“見えていなければ管理とは言えない”という考え方を読み解きながら、従来型のセキュリティチェックシート運用がなぜ通用しなくなっているのかを、もう一歩踏み込んで整理します。


✦ さいごに

ここまでお読みいただき、ありがとうございました。

私たちPIPELINE株式会社は、私たちは、サイバーセキュリティと脅威情報(Threat Intelligence)を専門とする専門家集団として、

日々、現場でお客様とともに脅威に向き合っています。

「社内に専門チームがあっても、リソースが足りない」「どこから手をつけたら良いか分からない」「攻撃される前提で現実的に備えたい」

といったご相談は少なくありません。会社の規模に関係なく、守りが弱い部分を狙われやすいというのが今の状況です。

そして、社内だけで抱え込むことで、どうしても見落としが生まれやすくなります。

だからこそ、私たちは理想論ではなく、現場で役立つ方法に絞り、スモールスタートで手軽に始められる形をご提案しています。「できる範囲の一歩」でも、安全性は大きく変わります。

少しでも不安があれば、どうぞお気軽にご相談ください。最短でセキュリティ強化に繋げる方法を共に整えていきましょう。






Latest Articles

bottom of page