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文部科学省が描く学校のデジタル安全戦略:教育情報セキュリティポリシーガイドラインの全貌

  • Pipeline Co. Ltd.
  • 2023年4月15日
  • 読了時間: 10分

文部科学省が描く学校のデジタル安全戦略:教育情報セキュリティポリシーガイドラインの全貌
文部科学省が描く学校のデジタル安全戦略:教育情報セキュリティポリシーガイドラインの全貌

1.はじめに

文部科学省は、急速に進展するデジタル教育環境における児童生徒の安全を守るため、「教育情報セキュリティポリシーに関するガイドライン」を慎重に策定しました。このガイドラインは、GIGAスクール構想によって実現する1人1台端末環境において、子どもたちが安心して学習できるICT環境を構築することを最大の目的としています。 


本ガイドラインは、全国の地方公共団体が設置する公立小学校、中学校、特別支援学校などを主な対象とし、教育現場におけるデジタル技術の安全な活用のための包括的な指針を提供しています。

ガイドラインには、児童生徒が重要な情報に不正にアクセスするリスクを回避し、教育機関のネットワークセキュリティを確保するための具体的な対策を示しています。


ガイドラインの特徴は、単なる技術的な規制にとどまらず、教育現場の実態を深く理解した上で、セキュリティと利便性のバランスを重視している点にあります。クラウドサービスの活用や1人1台端末環境における新たなセキュリティ課題に対応するため、文部科学省は2021年に第3版へと改訂を行い、より現代的で柔軟なアプローチを示しました。



2.教育機関におけるネットワークセキュリティ対策の包括的アプローチ

学校のネットワークセキュリティを確保するためには、多層的で包括的な戦略が不可欠です。まず、端末認証システムの厳格な運用が最も重要な対策となります。電子証明書を活用した端末認証により、学校が指定した端末のみがネットワークに接続できるよう制御することで、不正な機器の侵入を根本的に防ぐことができます。


具体的な技術的対策として、VPN接続による通信の暗号化と無線LAN認証装置の導入が推奨されます。VPNは暗号化技術を使用して仮想的なプライベートネットワークを構築し、通信の盗聴リスクを極小化します。無線LAN認証装置は、事前に登録された端末のみがネットワークに接続できるようにすることで、未承認の端末からのアクセスを完全に遮断します。 さらに、包括的なセキュリティ対策として、Webフィルタリングシステムの導入も不可欠です。教育上不適切なサイトへのアクセスを自動的にブロックし、児童生徒を有害なオンラインコンテンツから保護します。加えて、クラウド型UTM(統合脅威管理)ソリューションを活用することで、アンチウイルス、不正アクセス監視、セキュリティポリシーの一元管理が可能となります。


人的側面においても、教職員に対する継続的なセキュリティ教育が重要です。個人情報保護の意識を高め、適切な情報管理手順を徹底することで、内部からの情報漏洩リスクを低減できます。特に、紛失や盗難時の端末制御設定、アプリケーション配信の管理、接続先ネットワークの厳格な制御が求められます。

最終的に、これらの対策を統合的に実施することで、児童生徒の安全なデジタル学習環境を確保し、教育機関のネットワークセキュリティを強化することができるのです。



3.第3版改訂の最大の特徴

第3版改訂の最大の特徴は、クラウドサービスの位置づけを大きく変更したことです。従来は外部サービスとみなされていたクラウドを、組織内部の環境として扱うことを明確にしました。これにより、セキュリティ基準を満たし、教育委員会や学校が採用している環境であれば、クラウドサービスの利用が実質的に解禁されました。 セキュリティ対策においては、1人1ID化に伴う新たな課題に焦点を当てています。具体的には、多要素認証とシングルサインオン(SSO)の導入を推奨しています。


多要素認証は、なりすましを防止し、パスワードのセキュリティ強度を高める仕組みとして位置づけられ、特に機微な情報を扱う際に有効な対策とされています。

情報資産の管理方法も大きく変更されました。従来のシステム別管理から、情報の重要性分類に基づく管理へと移行しました。これにより、情報の所在に関わらず、その重要度に応じた適切な取り扱いが可能になりました。特に重要性の高い情報についても、業務遂行上必要な場合は情報セキュリティ管理者の判断で持ち出しを可能とするなど、柔軟な対応を可能としています。


さらに、組織的なセキュリティ対策の重要性も強調されています。標的型メール訓練やインシデントレスポンス訓練など、実践的な対策を通じて、教育現場全体のセキュリティリテラシーを向上させることを目指しています。



4.教育委員会や学校現場における包括的な情報セキュリティ対策の実施方法について

教育委員会や学校現場に対して、組織体制の確立、児童生徒のアクセスリスク管理、教職員のセキュリティ意識向上など、包括的な対策を求めています。さらに、ゼロトラストの考え方に基づき、ネットワーク全体の通信を可視化し、潜在的なセキュリティリスクを事前に検知・対応できる仕組みづくりを推奨しています。


まず、組織体制の確立に関しては、最高情報セキュリティ責任者(CISO)を副市長または副知事とし、教育委員会と首長部局の情報政策担当部局との密接な連携を求めています。これにより、情報セキュリティインシデント発生時の迅速な対応と危機管理体制の強化を図ります。

児童生徒のアクセスリスク管理については、校務系システムと学習系システム間の通信経路を論理的または物理的に分離することが重要です。これにより、児童生徒が機微情報にアクセスするリスクを大幅に低減できます。さらに、学習系システムへの機微情報の保管を原則禁止とし、情報の重要度に応じた適切な管理を行うことが求められています。


教職員のセキュリティ意識向上に関しては、継続的な研修や訓練の実施が不可欠です。特に、標的型メール訓練やインシデントレスポンス訓練などの実践的な対策を通じて、教育現場全体のセキュリティリテラシーを向上させることが推奨されています。 また、技術的対策として、クラウドサービスの活用を含めた教育委員会による一元管理の導入が推奨されています。これにより、学校単位で機微情報を管理するリスクを低減し、より強固なセキュリティ体制を構築できます。


さらに、教職員の業務負担軽減とICTを活用した多様な学習の実現を両立させるため、セキュリティと利便性のバランスを考慮した対策が求められています。例えば、授業では比較的自由にインターネットを活用できる仕組みを整備しつつ、重要情報へのアクセスには多要素認証やシングルサインオン(SSO)の導入を推奨しています。

最後に、情報セキュリティポリシーの策定と定期的な見直しが重要です。各教育委員会は、文部科学省のガイドラインを参考にしつつ、自らの現状を踏まえた実効性のあるポリシーを策定し、継続的に改善していくことが求められています。



5.ゼロトラストの考え方に基づいたネットワーク全体の通信可視化と潜在的セキュリティリスクの事前検知・対応の仕組みづくり

ゼロトラストの考え方に基づいたネットワーク全体の通信可視化と潜在的セキュリティリスクの事前検知・対応の仕組みづくりは、包括的かつ継続的なアプローチを必要とします。

まず、ネットワーク全体の通信を可視化するためには、高度なモニタリングシステムの導入が不可欠です。これには、ネットワークトラフィックの分析ツール、ログ管理システム、そしてセキュリティ情報イベント管理(SIEM)ソリューションが含まれます。これらのツールを統合することで、ネットワーク上のすべての通信を詳細に把握し、異常な動きや潜在的な脅威を迅速に特定することが可能になります。


次に、ゼロトラストの原則に従い、すべてのアクセスを信頼せず、常に検証する仕組みを構築します。これには、多要素認証、デバイスの健全性チェック、アプリケーションの脆弱性スキャン、そしてユーザーの行動分析が含まれます。例えば、ユーザーが通常とは異なる時間帯や場所からアクセスを試みた場合、システムは追加の認証を要求したり、アクセスを制限したりすることができます。


さらに、マイクロセグメンテーション技術を活用して、ネットワークを細かく分割し、各セグメント間の通信を厳密に制御します。これにより、万が一侵入者がネットワーク内に侵入したとしても、その移動範囲を最小限に抑えることができます。 AIと機械学習技術を活用した高度な分析システムの導入も重要です。これらのシステムは、通常のネットワーク動作パターンを学習し、異常な挙動を迅速に検出することができます。例えば、通常とは異なるデータ転送パターンや、不審なファイルアクセスなどを即座に特定し、セキュリティチームに警告を発することが可能です。


また、クラウドアクセスセキュリティブローカー(CASB)の導入により、クラウドサービスの利用状況を可視化し、データの不正な持ち出しや不適切なアクセスを防止することができます。これは、クラウドサービスの利用が増加している現代のビジネス環境において特に重要です。


最後に、インシデントレスポンス計画の策定と定期的な訓練の実施が不可欠です。潜在的なリスクが検出された場合、迅速かつ効果的に対応するためのプロセスを事前に確立しておく必要があります。これには、自動化されたインシデント対応システムの導入も含まれ、検出された脅威に対して即座に対策を講じることができます。 このような多層的なアプローチを通じて、組織はネットワーク全体の通信を可視化し、潜在的なセキュリティリスクを事前に検知・対応する強固な仕組みを構築することができます。これにより、従来の境界型セキュリティモデルの限界を超え、より柔軟で効果的なセキュリティ態勢を実現することが可能となります。



6.まとめ

文部科学省の「教育情報セキュリティポリシーに関するガイドライン」の主な特徴と重要ポイントを以下にまとめました。


ガイドラインの目的と対象

  • GIGAスクール構想による1人1台端末環境での安全なICT学習環境の構築

  • 全国の公立小学校、中学校、特別支援学校などが主な対象

  • 教育現場におけるデジタル技術の安全な活用のための指針提供


ネットワークセキュリティ対策

  • 端末認証システムの厳格な運用(電子証明書を活用)

  • VPN接続による通信の暗号化

  • 無線LAN認証装置の導入

  • Webフィルタリングシステムの導入

  • クラウド型UTM(統合脅威管理)ソリューションの活用

  • 教職員に対する継続的なセキュリティ教育


第3版改訂の主な特徴

  • クラウドサービスの位置づけ変更(組織内部の環境として扱う)

  • 1人1ID化に伴う新たな課題への対応(多要素認証とシングルサインオンの推奨)

  • 情報資産管理方法の変更(情報の重要性分類に基づく管理)

  • 組織的なセキュリティ対策の強化(標的型メール訓練、インシデントレスポンス訓練など)


包括的な情報セキュリティ対策の実施方法

  • 組織体制の確立(CISOの設置、教育委員会と首長部局の連携)

  • 児童生徒のアクセスリスク管理(校務系と学習系システムの分離)

  • 教職員のセキュリティ意識向上(継続的な研修や訓練)

  • クラウドサービスを活用した一元管理の導入

  • セキュリティと利便性のバランスを考慮した対策

  • 情報セキュリティポリシーの策定と定期的な見直し


ゼロトラストアプローチの導入

  • 高度なモニタリングシステムの導入(ネットワークトラフィック分析、ログ管理、SIEM)

  • すべてのアクセスの常時検証(多要素認証、デバイス健全性チェック、行動分析)

  • マイクロセグメンテーション技術の活用

  • AIと機械学習を活用した高度な分析システムの導入

  • クラウドアクセスセキュリティブローカー(CASB)の導入

  • インシデントレスポンス計画の策定と定期的な訓練


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