セキュリティを強化する認証方法とは
- Pipeline Co. Ltd.
- 3月1日
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認証とは?
認証(Authentication)とは、あるエンティティが他のエンティティに対して、自分が主張する身元や情報が正しいことを証明するプロセスです。一般的には、システムやサービスにアクセスしようとする個人やデバイスが、自分が誰であるか、または何であるかを確認する手段として利用されます。認証は、セキュリティシステムの基本的な要素の一つであり、不正アクセスからシステムを保護するために重要です。
認証といえば、ID+パスワードを照合することがイメージされやすいですが、それだけではセキュリティ的に脆弱であり、また、ID・パスワードを忘れた場合を考えるとユーザの利便性が良いとはいえません。
認証の主な目的は、システムやデータへのアクセスを正当なユーザーに限定することにあります。認証プロセスを通じて、システムはユーザーが自分たちであると主張する身元を確認し、不正アクセス、データ漏洩、その他のセキュリティ違反を防ぐことができます。
このことに立ち返って、現代ではさまざまな認証方法が考案され、実現されています。
認証の主な方法は以下にまとめることができます。
何かを知っていること(知識ベース認証): これは最も一般的な認証方法の一つで、例えばパスワード、PIN(個人識別番号)、セキュリティの質問など、何か特定の情報を知っていることを証明する方法です。
何かを持っていること(所持ベース認証): この方法では、スマートカード、セキュリティトークン、携帯電話など、特定の物理的なデバイスを持っていることで認証します。
何者であるか(生体認証): 指紋認証、顔認証、虹彩認証、声紋認証など、個人の生体情報を使用して認証する方法です。
どこにいるか(位置ベース認証): これは、デバイスの地理的位置情報を使用して認証する比較的新しい方法です。
2. なぜ認証が強化されるようになったのか?
パソコンだけでなく、スマートフォンでいつでもどこでもインターネットサービスにアクセスできるようになりました。それにともない、ただホームページや電子メールにアクセスするだけでなく、銀行や暗号資産など金銭のやりとり、QRコード決済、オンラインショッピング、マイナンバーなどを利用した行政サービス、公共交通機関の利用など、生活に密着した様々なサービスが世界中から誰でもアクセスできるインターネットを介して利用されるようになっています。
それにともない、このような状況は、不正アクセスのリスクを増加させ、個人情報の盗難や金融詐欺などの犯罪に対する潜在的な脅威を高めています。
サイバー犯罪者は、技術の進化に合わせてその攻撃方法を洗練させています。彼らは、進化するデジタル環境を利用して、ますます複雑で巧妙な攻撃を仕掛けてきます。これには、ユーザーの認証情報を盗み出すフィッシング攻撃、システムに悪意のあるソフトウェアを仕込むマルウェア攻撃、データを人質に取り身代金を要求するランサムウェア攻撃などが含まれます。従来の単純なID+パスワード認証では、これらの脅威に対抗するのが難しくなっています。
このようなことから、個人情報の安全性に対する一般の意識は、これまで以上に高まっています。特に、EUにおけるGDPRの導入は、個人情報保護に関する新たな基準を設け、世界中の企業や組織に影響を与えています。このような規制は、企業が個人情報をどのように収集、使用、保護するかについての透明性を高め、消費者の信頼を確保するために重要です。
現代のデジタル社会において、データは、現代ビジネスにおいて最も価値のある資産の一つとなっています。ビッグデータの分析やAI技術の進展により、個人データは企業にとって重要な戦略的リソースとなり、顧客体験のパーソナライズや効果的なマーケティング戦略の策定に利用されています。このため、これらのデータが不正アクセスや漏洩によって悪用されることは、企業にとって重大な損失を意味します。
これらの理由から、現代社会では認証プロセスの強化が必要不可欠となっています。認証プロセスを強化することで、個人情報の保護、企業の信頼性の維持、そしてサイバー犯罪への対策が可能になります。では、認証プロセスを強化するために、現代の技術がどのように貢献しているのか、具体的な例を挙げてみましょう。
3.認証方法の具体例
固定のIDとパスワードのみに頼らない認証方法の具体例をあげて、説明します。
多要素認証(MFA)
多要素認証は、セキュリティを強化するために、2つ以上の異なる種類の認証要素を組み合わせる方法です。これには、以下のような要素が含まれます:
知識要素(ユーザーが知っている情報、例えばパスワードやPINコード)
所有要素(ユーザーが物理的に持っているアイテム、例えばスマートフォンやセキュリティトークン)
生体要素(ユーザーの生体情報を利用する認証、例えば指紋や顔認証)
多要素認証は、これらの要素を組み合わせることで、不正アクセスのリスクを格段に減らすことができます。
ワンタイムパスワード(OTP)
ワンタイムパスワードは、一度使用されると無効になる一時的なパスワードです。このパスワードは、SMS、メール、または専用アプリケーション(例:Google Authenticator)を通じてユーザーに提供されます。ログインのたびに新しいパスワードが生成されるため、パスワードの盗難やリプレイ攻撃のリスクを効果的に防ぐことができます。
生体認証
生体認証は、指紋、顔認証、虹彩認証、声紋認証など、個人の固有の身体的または行動的特徴を用いて認証する技術です。これらの特徴は複製が難しく、また、紛失や忘れることもありません。このため、セキュリティを高めるとともに、ユーザビリティも向上します。
行動認証
キーストロークダイナミクス(タイピングのリズムや速度)、マウスの動き、歩行パターンなど、ユーザーの行動パターンを分析して認証を行います。これらのパターンは個人に固有であり、模倣が困難なため、高いレベルのセキュリティを提供することができます。
認証トークン
USBキーなどの物理的なトークンやソフトウェアトークンを利用します。ユーザーは、ログイン時にトークンをデバイスに挿入するか、トークンから生成されるコードを入力することで認証を行います。
ゼロトラストネットワークアクセス
ゼロトラストネットワークアクセス(ZTNA)は、ユーザーがネットワーク上のリソースにアクセスする際に、その都度認証を要求するセキュリティモデルです。これにより、内部ネットワークであっても信頼を前提とせず、常に最小限のアクセス権で操作を行います。
これらの認証方法は、固定のIDとパスワードだけに依存するよりも、はるかに高いセキュリティレベルを提供します。組織や個人によっては、これらの方法を組み合わせて使用することで、さらにセキュリティを強化することも可能です。
4.まとめ
インターネットサービスの普及により、金銭のやり取り、行政サービスの利用などがオンラインで行われるようになり、不正アクセスのリスクや個人情報の盗難などの犯罪が増加していることに対して、認証の強化でセキュリティ脅威に対抗しようとしていますが、サービスを利用するユーザが継続的に利用できるようにするためには、なるべくユーザビリティを損なわないようにしなければなりません。
さらに、サイバー犯罪の進化、データの価値の増加、GDPRなどの個人情報保護規制の導入などが、認証プロセスの強化を必要としています。
こうした考えから、固定のIDとパスワードだけに依存するよりも高いセキュリティレベルを提供する方法として、多要素認証(MFA)、ワンタイムパスワード(OTP)、生体認証、行動認証、認証トークン、ゼロトラストネットワークアクセス(ZTNA)が普及しています。
組織や個人はこれらの認証方法を組み合わせて使用し、セキュリティを一層強化することが可能です。













