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高度な持続的脅威(APT)とは

  • Pipeline Co. Ltd.
  • 2024年6月15日
  • 読了時間: 6分

高度な持続的脅威(APT)とは
高度な持続的脅威(APT)とは

高度な持続的脅威(APT: Advanced Persistent Threat)は、現代のサイバーセキュリティ環境において最も深刻かつ複雑な脅威の一つとして認識されています。APT攻撃は、特定の組織や個人を綿密に調査し、長期にわたって持続的に行われる高度なサイバー攻撃の形態を指します。これらの攻撃は、国家支援のハッカー集団や組織的な犯罪シンジケートなど、高度な技術力と豊富なリソースを持つ攻撃者によって実行されることが多く、その目的は主に機密情報の窃取、知的財産の盗用、重要インフラの破壊などにあります。 APT攻撃の特徴として、まず挙げられるのはその標的性です。


攻撃者は特定の組織や個人を綿密に調査し、その弱点を徹底的に分析した上で攻撃を仕掛けます。この準備段階では、公開情報の収集からソーシャルエンジニアリングを駆使した内部情報の入手まで、あらゆる手段が用いられます。次に、その高度性が挙げられます。


APT攻撃では、最新のマルウェアやゼロデイ脆弱性を利用した攻撃手法など、従来のセキュリティ対策では検知や防御が困難な高度な技術が使用されます。さらに、その名が示す通り、APT攻撃は長期間にわたって持続的に行われます。攻撃者はシステムに侵入した後も、長期間にわたって潜伏し続け、内部ネットワークの偵察や更なる侵害範囲の拡大を図ります。



APT攻撃のプロセス

典型的なAPT攻撃のプロセスは、以下のような段階を経て進行します。まず、準備段階では標的組織の徹底的な調査と侵入計画の立案が行われます。

次に、初期侵入段階では、フィッシングメールや水飲み場型攻撃、ゼロデイ脆弱性の悪用などの手法を用いて、組織のネットワークへの足がかりを得ます。

侵入に成功すると、攻撃者は潜伏と拡大の段階に移行し、バックドアの設置や内部ネットワークの偵察を行います。この段階では、正規のユーザーやシステム管理者の資格情報を窃取し、より深部へのアクセス権を獲得することも多々あります。


その後、情報収集段階に入り、目的の情報へのアクセスと窃取を行います。

最後に、データ抽出段階では、収集した機密情報を外部のサーバーへと送信します。

この一連のプロセスは、数週間から数ヶ月、時には数年にわたって継続される場合もあります。 



APT攻撃への対策

APT攻撃への対策は、その複雑性と持続性ゆえに、単一の解決策では不十分であり、多層的かつ包括的なアプローチが必要となります。

まず、ネットワークセキュリティの強化が不可欠です。最新のファイアウォールや侵入検知・防御システム(IDS/IPS)の導入、ネットワークセグメンテーションの実施などが重要な対策となります。同時に、エンドポイントセキュリティの強化も重要です。最新のアンチウイルスソフトウェアの導入と定期的な更新、エンドポイント検知・対応(EDR)ソリューションの導入などが効果的です。 


また、多要素認証の導入によるアカウントセキュリティの強化も、APT攻撃対策の重要な要素です。単純なパスワード認証だけでなく、生体認証や物理トークンなどを組み合わせることで、不正アクセスのリスクを大幅に低減できます。さらに、従業員教育も非常に重要な対策の一つです。

APT攻撃の多くは、フィッシングメールなど、人間の心理的な弱点を突いた手法から始まるため、全従業員のセキュリティ意識を向上させ、定期的な訓練を実施することが不可欠です。


加えて、最小権限の原則に基づいたアクセス権限の適切な管理も重要です。各ユーザーやシステムに必要最小限の権限のみを付与することで、攻撃者が高権限を獲得するリスクを低減できます。


また、ネットワーク上の異常な活動を早期に検知するため、継続的な監視と分析が必要不可欠です。セキュリティ情報・イベント管理(SIEM)システムの導入や、高度な脅威分析ツールの活用が効果的です。


さらに、APT攻撃が発生した際の迅速かつ効果的な対応を可能にするため、詳細なインシデント対応計画を事前に策定しておくことが重要です。この計画には、初動対応から被害の特定、封じ込め、根絶、復旧までの一連のプロセスが含まれるべきです。


また、定期的なセキュリティ評価を実施し、組織のセキュリティ態勢における脆弱性を特定し、適切な対策を講じることも重要です。これには、脆弱性スキャン、ペネトレーションテスト、レッドチーム演習などが含まれます。 APT攻撃は、その高度性と持続性ゆえに、完全に防ぐことは極めて困難です。そのため、組織は「侵害されることを前提とした」セキュリティ戦略を採用し、早期検知と迅速な対応に重点を置くことが重要です。


また、サイバーセキュリティの専門家や関連機関との情報共有や協力関係の構築も、APT攻撃への対策において重要な要素となります。最新の脅威情報や攻撃手法に関する情報を常に把握し、自組織の防御態勢に反映させることが求められます。



APT攻撃の歴史と最近の傾向

APT(Advanced Persistent Threat)という用語は、2006年にアメリカ空軍によって初めて使用されました。当時、正体不明の敵による攻撃について議論する際に、この用語が用いられました。しかし、APT攻撃の概念自体は、それ以前から存在していたと考えられています。 


・2000年代初頭:初期のAPT攻撃

2000年代初頭から、国家支援型のサイバー攻撃が徐々に増加し始めました。この時期の攻撃は、主に政府機関や軍事組織を標的としていました。 


・2010年前後:APT攻撃の顕在化

2010年頃から、APT攻撃が企業や組織にとって重大な脅威として認識されるようになりました。この時期には、以下のような注目すべき攻撃が発生しています。 

  1. Operation Aurora(2009年):Googleをはじめとする多数のIT企業を標的とした攻撃

  2. Stuxnet(2010年):イランの核施設を標的とした高度なマルウェア攻撃


・2010年代中盤:APT攻撃の多様化

2010年代中盤になると、APT攻撃はさらに洗練され、多様化しました。この時期には、以下のような特徴が見られます: 

  1. 攻撃対象の拡大:政府機関や大企業だけでなく、中小企業も標的に

  2. 攻撃手法の高度化:ゼロデイ脆弱性の活用、サプライチェーン攻撃の増加

  3. APTグループの出現:APT1(中国)、APT28(ロシア)など、国家支援型のハッカー集団が特定され始める


・2010年代後半:日本への攻撃増加

2010年代後半になると、日本企業や組織を標的としたAPT攻撃が増加しました。従来、日本語の特殊性などから日本企業は狙われにくいと考えられていましたが、巧みな日本語を使用した攻撃が増加傾向にあります。 


・現在のAPT攻撃の傾向

現在のAPT攻撃には、以下のような特徴が見られます: 

  1. 攻撃の隠密性と持続性の向上

  2. AI技術の活用による攻撃の自動化と高度化

  3. クラウドサービスを標的とした攻撃の増加

  4. ランサムウェアとの組み合わせによる複合的な攻撃



まとめ

APT攻撃は現代のデジタル社会における最も深刻な脅威の一つであり、その対策として組織全体での継続的かつ包括的な取り組みが必要不可欠です。技術的対策、人的対策、運用面での対策を適切に組み合わせ、常に進化する脅威に対応できる柔軟かつ強固なセキュリティ態勢を構築することが、組織の重要な資産を守るための鍵となります。


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