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AlmaLinux 〜RHEL互換ディストリビューションをめぐる動向〜

  • Pipeline Co. Ltd.
  • 2022年10月15日
  • 読了時間: 5分

AlmaLinux 〜RHEL互換ディストリビューションをめぐる動向〜
AlmaLinux 〜RHEL互換ディストリビューションをめぐる動向〜

■AlmaLinuxとは?

「AlmaLinux」とは、CentOSの上流ソースであるRHEL(Red Hat Enterprise Linux)のクローンとして設計された、エンタープライズクラスのLinuxディストリビューションです。2020年末にRed HatがCentOS 8のサポートを2021年末で終了すると発表した後、CentOSユーザコミュニティは代替ソリューションを求めました。これに応えて、AlmaLinuxはCloudLinux社によって提供され、2021年初めにリリースされました。


AlmaLinuxは、RHELのクローンとして開発されているため、RHELと同じように動作します。つまり、RHELで動作するソフトウェアやサービスはAlmaLinuxでも問題なく動作するはずです。これは、特にエンタープライズ環境で重要な利点であり、システムの移行を容易にします。CentOS8サーバからAlmaLinuxへ移行する場合、手順や設定に大きな手を入れずにすぐに移行完了できることになります。


また、セキュリティアップデートの提供では、CentOSと比較しても遜色ないスピードで行われていることも、AlmaLinuxを選定するための重要な点です。

このプロジェクトの特徴は、オープンソースであり、コミュニティ主導であることです。つまり、開発方針や将来のプランは、ユーザーや貢献者のニーズに基づいています。AlmaLinuxは無料で、その開発やメンテナンスはCloudLinux社が財政的にサポートしています。これにより、長期にわたるサポートと持続可能な開発が期待されています。


AlmaLinuxは、サーバーとしての利用に特化して設計されており、安定性やセキュリティ、パフォーマンスなど、エンタープライズレベルの要件を満たすようになっています。また、システム管理者が簡単に移行できるよう、CentOSからの移行パスも提供されています。



■「CentOSショック」〜CentOSのサポート終了が与えた影響〜

CentOSは2004年に最初にリリースされました。そして2014年Red Hat社がCentOSを買収したことにより、RHEL互換ディストリビューションとしての絶対的な地位を得ました。有償であるRHELのソースコードを基にした互換性がありながらも無料で使用できる、パッチ提供が迅速である、ということから、商用環境でも多く採用されてきました。これはCentOSを採用するに値する大きな特徴であるとともに、Red Hat社のソースコード提供の方針によって影響されることも意味します。


そして2020年12月、Red Hat社はCentOSプロジェクトの方針変更を発表しました。これはRed Hatによる戦略的な決定に起因しています。CentOS 8のサポートを2029年ではなく、2021年末に終了すると発表したのです。これに加えて、CentOSプロジェクトの焦点を、安定したリリースからローリングリリースモデルに移行するCentOS Streamにシフトすると発表しました。CentOS StreamはRHELのアップストリームという位置づけのため、RHEL互換ディストリビューションとは言えなくなりました。CentOSユーザが求めているのはRHELとの高い互換性です。CentOSユーザは急遽、RHELの有償ライセンスを購入するか他のRHEL互換ディストリビューションを採用するかを模索する必要に迫られました。

このような状況の中、AlmaLinuxやRocky Linuxなどの代替プロジェクトが登場し、CentOSからのスムーズな移行をサポートする道が提供されるようになりました。



■AlmaLinuxとRocky Linuxどちらが優位か?

Rocky Linux はRHELのソースコードを使用し、互換性を持つように設計されたLinuxディストリビューションです。Rocky Linuxという名称は、初期のCentOSプロジェクトの共同開発者であるRocky McGaugh(ロッキー・マクガウ)という人物の名前から名付けられました。AlmaLinux同様、CentOSと同様の利用が可能となっています。AlmaLinux以外でCentOSの後継として考えられるOSの一つがRocky Linuxです。


AlmaLinuxはRocky Linuxよりも早く正式リリースされたこともあり、ミラーリポジトリやクラウド対応が早く行われています。またセキュアブートに関しても、AlmaLinuxは既に対応済みというのも、AlmaLinuxが優位であるポイントの一つであります。2022年5月のRHEL9のメジャーバージョンアップに伴うリリースでは、AlmaLinux9がRocky Linux9より 約2ヶ月先行してリリースされました。AlmaLinuxがCentOS後継のRHEL互換として定評があるのは、このような互換性追従のスピードです。しかし、Rocky Linuxも徐々に機能面や利用可能な環境についての大きな差が無くなってくると考えられます。CentOSの代わりにどのOSを後継に選択するかという問題は、安定的に開発・プロジェクト活動の継続が行われていくかが焦点になります。現状はAlmaLinuxが優位な状況にあるものの、CentOSの時のような圧倒的な優位性を持つRHEL互換という状況ではないため、今後の動向を見守っていく必要があります。



■RHELのソースコード公開限定化が互換ディストリビューションに及ぼす影響

Red Hat社は2023年6月21日にRHELのソースコード公開を再頒布しないことに同意した顧客やパートナーに限定すると発表しました。

Furthering the evolution of CentOS Stream

「CentOS Streamのソースコードは一般公開するが、RHELのソースコードは一般公開しない」というのが基本的な方針です。


このことは、AlmaLinux、Rocky Linuxといった新たに誕生したRHEL互換ディストリビューションへの影響が考えられますが、各ディストリビューションは何かしらの緩和策や戦略を策定する必要に迫られています。

オープンソースソフトウェアは、さまざまな理由で発展してきました。無償もしくは低コストで使用できる、ソースコードが公開されているのでベンダロックインされない、などの利用者側のメリットが最大の発展理由でしょう。しかし、開発者側にもメリットはあります。利用者が増えバグ報告されることで品質が上がる、開発メンバーが増えることで開発が進む、ドキュメントや技術情報が多言語で展開されることで利用ユーザーが増えるなどです。

今回のRHELソースコード公開の制限は、従来行われてきた、オープンソフトウェアとして提供することにより、オープンな開発コミュニティが活発な開発を進めていくという流れとは相反する動きとなっているのではないでしょうか。


一方、営利企業としてのRed Hat社は活動をマネタイズしていく必要もあり、そうしたバランスを考慮した結果であるともいえます。

こうした状況からも、RHEL互換OSをどのように導入していくかは、今後の動向を見守りながら、慎重に進めていく必要があるといえます。


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