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ランサムウェア攻撃に遭ったらどうしたらいいのか?対応方法を過去に学ぶ

  • sfujiko
  • 2023年6月15日
  • 読了時間: 8分

ランサムウェア攻撃を受けた場合の対応は、被害を最小限に抑えるために極めて重要です。以下に、具体的な対処方法や考慮すべき点を詳しく説明します。


1.ランサムウェア攻撃にあった場合にやるべきこと・やってはいけないこと

ランサムウェアに感染した際には、まず冷静に対応することが求められます。最初に行うべきは、感染した端末をネットワークから隔離することです。これにより、感染が他のシステムやデバイスに広がるのを防ぎます。次に、専門家への相談が必要です。信頼できるサイバーセキュリティ専門家の助言を受けることで、適切な対応策を講じられます。

一方で、感染時にやってはいけないこともあります。再起動は避けるべきです。再起動すると暗号化が進行する可能性があります。また、感染後のバックアップはしないようにしましょう。ランサムウェア自体をバックアップしてしまう危険があります。さらに、身代金の支払いは推奨されません。支払ってもデータが回復する保証はなく、犯罪者の資金源となるだけでなく、新たな攻撃を招く可能性があります。


2.身代金を支払うべきか?支払った場合とそうでないとで起きうること

身代金の支払いには多くのリスクが伴います。支払ったとしてもデータが必ずしも回復するわけではなく、追加の要求をされる可能性もあります。また、支払いは犯罪者の活動資金となり、新たな攻撃を助長することになります。一方で、支払わない選択をした場合にはデータが回復しない可能性がありますが、組織として犯罪行為への資金提供を避けることができます。

以下に、この決断に伴う潜在的な結果と考慮すべき点について詳しく説明します。


身代金を支払う場合の結果とリスク

  1. データ回復の不確実性: 身代金を支払えば暗号化されたデータへのアクセスが戻るように思えるかもしれませんが、攻撃者が支払い後に有効な復号キーを提供する保証はありません。調査によると、多くの組織が身代金を支払ってもデータを完全には回復できていません。場合によっては、攻撃者がデータを復元する能力を持たないこともありますし、別の犯罪グループに復号キーを売却することもあります。 

  2. 将来の攻撃の助長: 身代金を支払うことは、組織が要求に応じる意志があるとサイバー犯罪者に示すことになり、将来的に再び攻撃される可能性が高まります。一度身代金を支払った被害者は再度ターゲットにされることが多く、その際にはより高額な要求がされることもあります。このような状況では、一度支払うことで繰り返し恐喝されるサイクルが生まれます。 

  3. 財務的および法的リスク: 身代金の支払いは財務的負担となり、コスト削減や人員削減につながる可能性があります。また、制裁やマネーロンダリング防止規制に違反する可能性もあり、法的な問題を引き起こすことがあります。制裁対象となる団体への支払いは違法行為として罰金を科されるリスクがあります。 

  4. 評判へのダメージ: 組織が身代金を支払ったことが公になると、データ保護能力への信頼が失われ、顧客やパートナーからの評判が悪化する可能性があります。さらに、犯罪行為に資金提供したと見なされることで、世間からの評価も悪化する恐れがあります。 

  5. 追加要求の増加: 攻撃者は初回の支払いを弱みとして捉え、更なる資金を要求する可能性があります。このような交渉は資源を消耗させ、業務の安定性をさらに損ないます。

     

身代金を支払わない場合の結果と利点

  1. データの永久的な損失: 支払いを拒否すると、バックアップや他の回復手段がない場合にはデータが永久に失われる可能性があります。これにより業務運営が大きく混乱し、生産性や収益に影響を及ぼします。 

  2. 業務上の混乱: 身代金を支払わない選択は、自力でシステム復旧作業を行うため業務中断が長引く可能性があります。これによって大幅なダウンタイムや運営上の問題が発生します。 

  3. 法的および規制上の課題: 機密データを適切に保護できなかった場合には法的罰則や訴訟リスクが生じます。 

  4. サイバーセキュリティ体制の強化: 支払い拒否は組織に対してサイバーセキュリティ対策と将来の攻撃への耐性強化を促し、長期的にはより安全な環境づくりにつながります。このアプローチは堅牢なバックアップと包括的な災害復旧計画の重要性を強調します。 

  5. 倫理的考慮: 支払い拒否によって犯罪者への資金提供を避けることで、その活動継続への経済的インセンティブを与えず、結果として攻撃頻度減少につながる可能性があります。この姿勢は倫理的ビジネスに対する姿勢と一致し、犯罪行為への資金提供拒否という観点で評価されます。 


まとめると、身代金支払いは一見迅速な解決策となり得ますが、それにはデータ回復不確実性や将来攻撃助長、法的影響など重大なリスクがあります。一方で支払い拒否は即時的な運営上課題につながるものの、サイバー脅威対策強化と耐性向上につながります。各組織はこれら要素を慎重に検討し、自身状況に応じた対応戦略決定する必要があります。



3.実際の被害と対応例

ランサムウェア攻撃を受けた際に、身代金を支払うかどうかの判断は企業にとって非常に重要であり、その結果はさまざまな影響を及ぼします。以下に、実際に被害を受けた企業の行動と調査結果を示します。 


身代金を支払った場合の行動と結果

多くの企業が、データの迅速な回復や業務再開のために身代金を支払うことを選択しています。例えば、オランダの大学は2019年にランサムウェア攻撃を受け、30ビットコイン(約22万ドル)を支払い、その結果システムが復旧しました。この決断は、研究データや試験、給与支払いの遅延を避けるためでした。

また、アメリカの病院も2016年にランサムウェア攻撃を受け、40ビットコイン(約1万7,000ドル)を支払いました。この病院は、最も迅速かつ効率的にシステムと管理機能を復旧させるためには身代金を支払うことが最善であると判断しました。

しかし、身代金を支払ったとしても、データが完全に回復する保証はありません。身代金を支払った企業の約半数が復号キーを受け取った後もデータアクセスができなかったといわれています。 


身代金を支払わなかった場合の行動と結果

一方で、一部の企業は身代金を支払わずに対応することを選びました。例えば、日本では災害対策としてバックアップが普及しており、多くの企業がバックアップからの復旧を選択しています。これにより、日本は他国と比べて身代金支払い率が低くなっています

名古屋港は2023年7月にランサムウェア攻撃を受け、重要なシステムである名古屋港統一ターミナルシステム(NUTS)が停止しました。この攻撃により、全てのコンテナターミナルでの運用が中断され、物流に大きな影響を与えました。以下に、この事件の詳細と企業が取った行動、調査結果について説明します。 


名古屋港の被害と対応

ランサムウェア攻撃は、ロシア系とされる「LockBit」という攻撃者グループによって行われたと考えられています。この攻撃により、NUTSのサーバーが暗号化され、システムが停止しました。名古屋港は、日本の重要な産業である自動車を中心に扱う中部地方の主要港であり、その影響は大きく、一時的に物流が停止しました。

名古屋港運協会は、迅速な復旧を最優先事項とし、バックアップデータを使用してシステムを復旧させることを決定しました。これにより、感染前の状態に戻すことができましたが、感染経路の特定や犯人の特定が難しくなるという懸念もありました。


結論

多くの企業が身代金支払いを検討するものの、その後も繰り返し攻撃されるケースが多いです。一般的には、ランサムウェア攻撃者には身代金を支払うべきではないと推奨されています。理由としては、データ復旧が保証されないことや、支払いによって企業が「支払い可能な標的」と見なされるリスクが挙げられます。

一方、ランサムウェア攻撃による身代金額は年々大幅に増加しており、多くの組織が高額な要求に直面しています。しかし、それでも身代金を支払わない方針を採用する組織も増えており、この傾向は世界的に広まっています。

結論として、身代金支払いは一見迅速な解決策となり得ますが、それには多くのリスクと長期的な問題があります。一方で、支払い拒否は即時的な課題につながるものの、強化されたセキュリティ対策によって長期的なレジリエンス向上につながります。各企業はこれら要素を慎重に検討し、自社状況に応じた対応戦略決定する必要があります。



4.復号ツールの活用はどの程度効果的なのか?

復号ツールは、多くの場合で有効な解決策となり得ます。「No More Ransom」プロジェクトなどが提供する復号ツールは、多くのランサムウェアファミリーに対応しており、多くの被害者がこれらのツールによってデータを回復しています。しかし、すべてのランサムウェアに対して効果があるわけではないため、事前に対応可能か確認する必要があります。



5.「No More Ransom」プロジェクトとは?

「No More Ransom」プロジェクトは、2016年に欧州刑事警察機構(ユーロポール)などが立ち上げた官民連携の取り組みであり、ランサムウェア被害者を支援するための復号ツールや情報を提供しています。このプロジェクトは、多くの国際的な組織と協力し、151種類以上のランサムウェアファミリーに対応した復号ツールを提供しています。



6.ランサムウェア攻撃にあっても被害を最小限に抑えるためにやっておくべき対策

事前の予防策としては、定期的なバックアップやセキュリティパッチの適用が重要です。また、不審なメールやリンクを開かないよう従業員教育を行い、強力なパスワードと多要素認証を導入することも推奨されます。さらに、信頼できるアンチウイルスソフトウェアとネットワーク監視システムを導入し、安全性を高めましょう。



7.まとめ

ランサムウェア攻撃への対応は迅速かつ適切である必要があります。ネットワークからの隔離や専門家への相談など初動対応をしっかり行いましょう。また、身代金は支払わず、「No More Ransom」プロジェクトなどの復号ツールを活用してデータ回復を試みることが重要です。事前予防策としてセキュリティ教育やシステム更新なども怠らず実施し、安全なIT環境を維持することで被害を最小限に抑えることができます。



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