MDR 〜セキュリティ体制の高度化とコスト低減をともに実現する〜
- Pipeline Co. Ltd.
- 2024年11月1日
- 読了時間: 7分

1.MDRとは
MDR (Managed Detection and Response) は、組織のサイバーセキュリティを強化するためのマネージドサービスです。MDRは、24時間365日体制でネットワークやシステムを監視し、脅威の検知、分析、対応を行います。従来のセキュリティ対策と比較して、MDRは未知の脅威にも対応できる点や、専門家による迅速な対応が可能である点が特徴です。
MDRサービスは主に2つのタイプに分類されます。セミマネージド型MDRは、組織内部で一部の監視や初期の脅威検知を行い、詳細な分析や対応をMDRサービスプロバイダに委託します。一方、フルマネージド型MDRは、脅威の検知から対応までのすべてのプロセスをサービスプロバイダが担当します。
2.MDRを導入するメリット
MDRを導入するメリットは多岐にわたります。まず、セキュリティ専門家の知見を活用できることが挙げられます。多くの組織がセキュリティ人材の不足に悩んでいる中、MDRを導入することで高度な専門知識を持つ人材を確保できます。また、人材の育成・雇用コストを削減できるのも大きなメリットです。社内でセキュリティ運用チーム(SOC)を構築するには多大な時間と費用がかかりますが、MDRを利用することでこれらのコストを抑えつつ、確実な成果を得ることができます。
さらに、MDRを導入することで、24時間365日の最適なセキュリティ体制を常に運用できます。これにより、サイバー攻撃やマルウェアの侵入に対して迅速に対応することが可能になります。また、MDRは複数拠点の運用にも対応しているため、地方や海外拠点を含む組織全体のセキュリティレベルの向上と標準化が可能になります。
MDRの主な機能には、24時間365日のネットワーク監視・運用、ネットワーク内の脅威の検知および通知、脅威の切り離しなどがあります。これらの機能により、組織は高度なセキュリティ対策を実現し、サイバー攻撃に対する強固な防御体制を構築することができます。
3.MDR導入のステップ
MDRを導入する際の重要なステップとしては、まず自社のセキュリティニーズと現状を把握することが挙げられます。組織のセキュリティ上の課題、保護すべき重要な資産、現在のセキュリティ体制の弱点などを特定し、MDRサービスに求める具体的な機能や期待する成果を明確にする必要があります。
次に、現在のセキュリティ体制を評価し、MDRサービスとの統合や補完が必要な領域を特定します。既存のセキュリティツールや人材、プロセスを評価し、MDRサービスとの効果的な連携方法を検討します。
そして、自社のニーズに最も適したMDRサービスプロバイダを選択することが重要です。プロバイダの専門性、提供するサービスの範囲、対応能力、費用対効果などを総合的に評価し、最適なパートナーを選ぶ必要があります。
MDRの導入計画を策定する際は、段階的な導入や既存のセキュリティ体制との統合方法を考慮します。また、社内のステークホルダーへの説明や必要なトレーニングなども計画に含めるべきです。
4.MDR導入のコストを評価する
MDR導入のコストについては、自社でセキュリティチームを構築するよりも、トータルコストを抑えられる可能性があります。ただし、具体的なコストはサービスの範囲や組織の規模によって大きく異なるため、複数のプロバイダから見積もりを取得し、比較検討することが重要です。
5.MDR導入に際しての専門家の役割
MDR導入に際しての専門家の役割は非常に重要です。まず、セキュリティニーズの分析と最適なMDRサービスの選定において、専門家は組織のセキュリティ要件を詳細に分析し、MEDR(エンドポイント向け)、MNDR(ネットワーク向け)、MXDR(システム全体向け)など、最適なMDRタイプを選定します。また、組織の規模や業種に応じた適切なサービスを推奨します。
24時間365日の高度な監視と脅威検知においては、専門家チームが常時ネットワークを監視し、高度なAI技術と人的分析を組み合わせて、精度の高い脅威検知を行います。脅威を検知した際には、専門家が即座に適切な対策を講じ、システムの隔離やマルウェアの削除など、迅速な対応を行います。
また、セキュリティ専門家は常に最新の脅威情報を把握し、それに対する適切な対策を短時間で立案・実施します。組織のセキュリティリスクを事前に評価し、継続的な改善策を提案することも専門家の重要な役割です。
MDR専門家は、社内のIT部門やセキュリティチームと密接に連携し、効果的なセキュリティ体制の構築をサポートします。さらに、組織全体のセキュリティ意識向上のため、専門家が従業員向けのトレーニングを実施し、必要な知識やスキルの移転を行います。
これらの役割を通じて、MDR専門家は組織のセキュリティ体制を強化し、高度化・複雑化するサイバー脅威に対する効果的な防御を実現します。
6.MDRを導入した結果、どのような効果が得られるか
MDR導入により、組織のセキュリティリスクは以下のように低減されます。まず、24時間365日の監視体制により、脅威の早期発見と迅速な対応が可能になります。これにより、攻撃の影響を最小限に抑えることができます。
高度な脅威検知と分析により、AIと人的分析を組み合わせた高度な脅威検知が実現します。これにより、未知の脅威や複雑な攻撃パターンも検出できるようになり、従来の防御策では見逃されていた脅威にも対応できるようになります。
迅速なインシデント対応も、セキュリティリスクの低減に大きく貢献します。脅威を検知した際、専門家が即座に適切な対策を講じることで、被害の拡大を防ぐことができます。システムの隔離、マルウェアの削除、攻撃者のアクセス遮断などの対応により、インシデントの影響を最小限に抑えることが可能です。
セキュリティ体制の継続的改善も、MDR導入によるリスク低減の重要な要素です。インシデントの詳細な分析結果に基づいて、組織のセキュリティ体制の改善策を提案することで、セキュリティレベルが継続的に向上します。
最新の脅威情報の活用も、セキュリティリスクの低減に寄与します。MDRサービスプロバイダは常に最新のサイバー脅威情報を収集・分析しているため、新たな脅威に対しても効果的な対策を迅速に実施できます。
人材不足の解消も、セキュリティリスク低減の観点から重要です。セキュリティ専門家の知見を活用することで、社内のセキュリティ人材不足を補い、高度なセキュリティ対策を実現できます。
プロアクティブな対応への移行も、MDR導入によるリスク低減の大きな利点です。MDRの導入により、単なるリアクティブな対応からプロアクティブな対応へとシフトできます。これにより、標的型攻撃などの精巧な脅威にも効果的に対処できるようになります。
最後に、組織全体のセキュリティ文化の醸成も、長期的なリスク低減に貢献します。MDRは技術面だけでなく、組織全体のセキュリティ意識向上にも寄与します。これにより、長期的かつ包括的なセキュリティリスクの低減が可能になります。
7.MDR導入に関する課題
ただし、MDRを導入する際にはいくつかの課題も考慮する必要があります。例えば、プライバシーの問題があります。MDRサービスは、組織のネットワーク内の情報を外部のサービスプロバイダに提供する必要があるため、プライバシーやデータ保護の問題が伴います。この問題を解決するためには、MDRサービスプロバイダとの間で適切な契約を結ぶとともに、サービスプロバイダが適切なデータ保護を行っていることを確認することが必要です。
また、組織のニーズに応じたカスタマイズが難しい場合もあります。MDRサービスは一般的なセキュリティ対策を提供しますが、組織の特定のニーズに合わせてサービスをカスタマイズすることは困難な場合があります。これを解決するためには、導入前に組織のセキュリティ要件を明確にし、それに合ったサービスを提供できるMDRサービスプロバイダを選定することが重要です。
8.まとめ
結論として、MDRの導入は組織のセキュリティリスクを大幅に低減し、サイバー攻撃に対する強固な防御体制を構築するための効果的な手段です。ただし、その導入には慎重な計画と適切なサービスプロバイダの選定が不可欠です。組織のニーズを十分に理解し、適切なMDRソリューションを選択することで、セキュリティ体制を強化し、ビジネスの継続性と信頼性を高めることができます。